さまよえるユダヤ人は進化論への抵抗者

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さまよえるユダヤ人」という中世キリスト教の伝説があります。『魔法使いの嫁』魔法という人気マンガにも重要キャラクターという役割で登場しているので、それで知った人もいるかもしれませんね。

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さまよえるユダヤ人の伝説

十字架を背負って刑場まで引かれていくイエスに対して、ローマ総督ピラトの召使であるカルタフィリスという者が、「さっさと行け」と嘲笑を浴びせます。するとイエスは、「私は行くが、私が帰ってくるまで、おまえは待っていなければならない」という言葉をカルタフィリスに応えます。その意味は、イエスが復活する「最後の審判」の日が来るまで、カルタフィリスは死ぬことができない呪いであったのです。

彼は呪われた不死者として忌む存在になりました。定住することもできず、各地をさまよう運命になったのです。最後の審判の日が来るまで、許されることのない「さまよえるユダヤ人」です

不死者として、さまよわなくてはならない呪いをかけられた存在としては、アダムの息子、カインが最初かもしれません。死ぬことができないということは天国にも地獄にも行くことができません。天国に行けないことは、中世のキリスト教徒にとっては最大の恐怖だったのでしょう。

100年戦争で、ジャンヌ・ダルクの片腕として活躍し、その後、快楽殺人鬼になってしまった「青髭」こと、ジル・ド・レイも、死刑になることより、キリスト教から破門されることを恐れて泣いたといいます。また、イギリスの「失地王」ジョン王も、ローマ教皇の怒りに触れて破門を言い渡された時、自分の持つ領土をすべてローマ教皇に奉納すことで、破門からまのがれています。結局は、そのような服従の態度を見せたというだけであり、領土を失うことはなかったのですが、それほど破門というのは影響力があったのでしょう。

そう考えると、不死=天国に行けない、というのは恐ろしい罰だったのです。

生物学的な不死とは

生物学的なことはもちろん専門ではないのですが、不死であるということは、種としての進化ができないということを表していると思います。エネルギー保存の法則からすれば、地球上にある限られた資源で循環している生命は、そのエネルギーをムダにすることはできません。老いて、生命としての可能性が減少した個体は、そのエネルギーを若くて新しい種に渡さなくてはならないのです。エネルギーを有効に使い、より環境に適応して多く繁殖できることが進化であるならば、古い個体は退場を余儀なくされるでしょう。

進化しないということは、生存戦略が更新されないことを意味します。常に変化する環境に対して、種の絶滅という最悪なリスクを負う可能性が高くなるのですから、進化しないことを選ぶ種というのは少ないはずです。カルタフィリスの話は、そのことを象徴的に表現している寓話のようなものです。彼は定住もできず、永遠に(もしくは「最後の審判」の日まで)同じことを繰り返すことしかできません。そこには安らぎもないのでしょう。

仏教的に言えば、輪廻から解脱できずに、永遠に涅槃に到達できないことを決定づけられた存在です。仲間もおらず、無常にさらされ、孤独のなかを茫然と彷徨うことです。

もし、カルタフィリスが地上の王や生物の頂点に立つような存在であれば、多少は安らぎが見いだせるかもしれません。ただ栄枯盛衰は無常のなかにあり、そのようなものにすがるには、頼りない存在と言わざるを得ませんね。

人体に置き換えて考えてみる

ところで、人体は37兆個の細胞と、100兆個の細菌からできた巨大な生物コロニーです。この全体を、たった100億個の脳細胞がコントロールしているのですが、すべてにおいて管理できているとは考えにくいのは、数的にいって当然だと思います。

しかし、脳細胞からうまれる意志は、「死のう」と思えば自殺することができるように決定権を持っているのです。何兆という生物を道ずれにしてジェノサイドを選択できる、いわばエリート層の意思決定機関と言えるでしょう。

こうして考えてみれば、人間が社会の縮図であり、ミクロコスモス的な存在であることが理解できます。会社や組織、社会の仕組みにそっくりです。意思決定権や生殺与奪の権限を持つ上層部が、大量のエネルギー=富を利用できる特権構造に至るまで、人体と社会とは不思議なほどそっくりにできているような気がします。

下層に行けばいくほど、役割は固定され、大を生かすために小を殺すという、犠牲を強いられます。それでいて、その下層が存在しなければ上層も生きることができず、一方的に依存している関係でもあるのです。

ガン細胞やウィルスの突然変化というのは、生命の維持に影響を及ぼす行為ですが、こうしてみるとミクロの世界における、異端者の抵抗のような気もします。上層から下層まで、完全なピラミッド構造の制御体制に抵抗する、不死者、カルタフィリスは、支配者にとっては排除すべき存在なのですが、完全なものにわざと疵をつけるための装置なのかもしれません。


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