放浪の俳人、種田山頭火の句を眺めてみて

リラックス

山頭火といっても、ラーメン屋の名前ではありません。

明治から昭和初期にかけて、西日本を中心に放浪した俳人、種田山頭火は、いまでは国語の教科書でも紹介されるくらいメジャーな存在です。しかし実際には逆輸入というようなあり方で、死後に有名になった俳人でした。

種田山頭火はどんな存在だったか

種田山頭火は1882年に山口県の裕福な地主の家に生まれます。しかし、母親が自殺をしたり、家業が傾き一家離散するなどして、家庭生活は楽なものではなくなりました。

1923年に禅僧となり、旅の雲水の恰好をして全国を乞業して回るようになります。ときどき、俳句の後援者による好意により庵を持ち定住しますが、やはりその生活を捨てて放浪を繰り返します。

乞業のなかで自由律詩をつくり、俳諧の仲間の家を泊まり歩くなどして生活していました。生前は、ほぼ乞食として見られており、お布施が多ければ宿に泊まり飯を食い酒を飲むような破戒僧でした。

1940年、58歳で脳溢血でころり往生を遂げています。

俳句は自由律詩で、萩原井泉水、河東碧梧桐の門下でした。旅行記や庵にすむ生活を描いたものがほとんどです。たまに書く随筆などは、なかなか味のある枯れた雰囲気を醸していますが、実際には人の金で酒や飯を食うことをむしろ楽しんでいるところがあり、枯れたどころか、俗世に浸りきったヒモのような性格だったと言われています。

山頭火の句の特徴は楽天的

山頭火がつくった俳句は『鉢の子』『草木塔』といった句集にほぼまとめられています。これも、大山澄太らの後援者が集めたものです。もしこういった句集が作られずにいれば、種田山頭火の名前は消えていたでしょう。

その句は、非常に無邪気なところもあり、また旅や孤独に関する寂しさも感じさせるようなものが多いです。俗世から離れられない自身をしかたがないと開き直っているようなところもあり、またそこが愛嬌となって、なかなか捨てがたいと思います。山頭火の俳句の愛好家が多いのは、そのような平易でありながら凄みや共感をもたらすキーワードが散りばめられているからだと感じます。

同じ自由律詩の俳人、尾崎放哉の句は孤独を強く打ち出し、気が滅入るようなときに読むと共感を呼び起こします。それに比して、山頭火の句は天性明るく、楽天的で読むのに疲れません。鋭さでは放哉、気軽さでは山頭火が選ばれるでしょう。

日本で種田山頭火が有名になったひとつのきっかけとしては「まっすぐなみちでさみしい」という句が”this straight road, full of loneliness”として、アメリカのヒッピー文化に紹介されたところから逆輸入されたことが挙げられます。日本人は外国の権威に弱かったのです。

気に入りの句

種田山頭火には愛好家や研究家が多いため、代表作もほぼ確定しています。今回は、管理人が好きな句を選んで紹介したいと思います。

へうへうとして水を味ふ

暑い山の中を一人旅で歩いている雰囲気を感じます。水だ、助かった!のどの渇きを潤そう。なんとうまい水か。味わってみたいものです。

どうしようもないわたしが歩いている

普通に生活していても、夜道を歩いているとこんなむなしさを感じることはあります。どうしようもない。後悔と影をひきずりながら、歩くしかない。足よ、止まってくれるな。

うしろすがたのしぐれてゆくか

これはメジャーな句。托鉢の雲水姿がゆっくりと遠くへ去っていく姿が見えるようです。ちょっと自分を美化してますかね。

夕立が洗っていった茄子をもぐ

激しい夕立が上がった夏の夕方。涼しくなった畑から茄子をもいでくるみずみずしさ。ちょっとでも生活に楽しみを見出す心があります。

何もかも雑炊としてあたたかく

これは管理人が好きな句です。寒い日には温かいものが必要なんですよね。

よい宿でどちらも山で前は酒屋で

お布施をもらって宿で一杯、楽しもうという気楽さが伝わってきます。泊りの出張に行ったサラリーマンが、宿に荷物を置いて飯でも食べに行くか、という気分と似てるかな。

あるけばかつこういそげばかつこう

山のなかを一人で行くときは、カッコウが鳴く声が聞こえるだけでも楽しくなります。カラスやハトの鳴き声では、こうは気分が浮きません。

水音のたえずして御仏とあり

なんともありがたい湧き水です。石仏やお地蔵さんが祀られているのでしょうか。

うどん供えて、母よ、わたしもいただきまする

やっと母親の自殺ということに向かい合い、折り合いがついた気持ちが伝わってきます。この心境に至るまで、どのくらい時間がたったのでしょうか。

咳がやまない背中をたたく手がない

尾崎放哉「咳をしてもひとり」のオマージュでしょうかね。病気や体調不良のときには生活の孤独感がたまらなく寂しくなるときもあります。


いつも読んでいただいてありがとうございます。クリックしていただければ励みになります。いつも皆さまがリラックスしていられるように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました