後の先を取るための戦略は相手を吞むことから始まる

働き方

後の先」という言葉があります。相手があるスポーツや闘技において、相手が仕掛けてきた後に、こちらが動き先手を取るということです。言葉で言うと分かりにくいのですが、ボクシングのカウンターに例えると分かるかもしれません。

椿三十郎のラストバトル

黒澤明監督の映画『椿三十郎』のラストの決闘シーンで、この「後の先」が見事に表現されています。相手方が刀を順手で抜き、振り上げ振り下げるまでの間に、抜刀しながら相手の心臓をバッサリと切る。凄まじい勢いで血が飛び散るという、日本の映画史上、有名な決闘シーンです。

この居合抜きは、弧刀影裡流居合術(ことえりりゅういあいじゅつ)という、西南戦争がきっかけで生み出された居合の型のひとつからヒントを得てつくられた「逆抜き不意打ち斬り」という技です。西南戦争では薩摩方は示現流を使って打ち込みをしてきました。その初太刀の威力をカウンターにして、相手を倒すことで生まれた技でしょう。かなり危険な方法ではありますが、実戦の中から生まれた、血なまぐさい技が元になっているのです。

ボクシングによるカウンターが何故相手を一撃で仕留める力を持っているのか。それは、相手も攻撃しようとして拳に体重を乗せているために、その反動力がウェイトとして乗るからです。自分の攻撃力プラス相手の攻撃力が乗ることによって、威力が増加します。しかし、相手に打たれるかもしれない危険な戦法でもあるのです。

実際には、このカウンター攻撃を成功させるにはどうしたらよいでしょうか?宮本武蔵は「五輪書」の中で、相手を追い詰め、その行動をとらざる得ないように相手を封じ込めるということを説いています。相手の先の行動が読めれば、こちらがどのように動けばいいのかが分かるということですね。

しかし、「後の先」を実践するには、相手を先に動かして、さらに相手より早くこちらの攻撃を届かせないといけないことになります。注意力、視力、洞察力、俊敏性など、なにもかも上回っていなければ、相手を吞むことなどできないのでしょう。かなり難易度の高い戦法なのは間違いないです。

後の先はビジネスセンスが問われる

スポーツや剣技などの試合意外でも、「後の先」という言葉は使われます。カウンター攻撃という戦法は戦争でも使われます。戦術的には、相手の動き始めの体制が崩れたところを集中的に攻めるという意味ではないかと思います。戦略的には、単に先制攻撃のことを指すかもしれません。真珠湾攻撃や冷戦の核兵器の使い方などは後者に属するものだと思います。

ビジネスのことで言うならば、インターネットがらみの話では「後の先」を成功させた例が多いかもしれません。これは、テクノロジーが一部の天才たちによって作られて、一夜にしてゲームのルールが変わってしまうということをやりやすかったという分野だからです。

インターネットの検索エンジンとして、Altavistaが非常に優位に立っていた時期がありました。しかし、そのような優れた技術を持った企業であっても、油断しているうちにYahooに抜かれ、あっという間に優位性をひっくり返されてしまいました。そのYahooでさえ、Googleの台頭には勝てず、今にいたるという訳です。有名どころばかりではなく、インターネットの黎明期からみると検索エンジンなどは200以上の企業が名乗りをあげ、勝ち残ったのはほんの一部です。ビジネスの厳しさではありますが、相手の優位性よりもさらに優れたものでシェアを奪いとるという闘いは、「後の先」の例になるのではないでしょうか。

また、インターネットの黎明期には日本では新聞社やテレビなどのマスコミがその将来性に気づいていて積極的に展開していれば、ネットビジネスの中心にいられたでしょう。しかし、自分たちのビジネスや利権などをあまりに重視したために、インターネットなど広がらないという自縛状態になり、大きなチャンスを逃してしまったのです。いまとなっては、GoogleやAppleなどのグローバル企業によって牛耳られているネットビジネスに参入することすら難しい状態にあり、新聞は部数の現象に歯止めがかからず、メディアといえばテレビではなくネットとして定着してしまいました。

「後の先」を取る機会と、十分な資本があったのにもかかわらずこのような結果になったのは、スピード感や感受性が圧倒的に足りなかったのでしょう。日本製品がすぐにガラパゴス化するのも、そこに理解のある起業家が足りなかったのかもしれません。

しかし、ソフトバンクの孫会長や、ライブドアの堀江元社長などはきっと鋭敏な感覚を持っているのでしょう。いまだに大きな影響力を持つのはそのような社会のルールを作る側の人間だからだと思います。こういったセンスを身に着けるのは、並大抵のことではありません。しかしすでにセンスが問われる時代にいるからには、コストをかけて、何らかのメソッドを利用してでも、センスを身に着けるべきだと感じます。


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