『映像の世紀』、その2

リラックス

NHKスペシャルとして放映された、『映像の世紀』を紹介していきます。今回は、2回目に放映された、「大量殺戮の完成~塹壕の兵士たちは凄まじい兵器の出現を見た~」です。第一次世界大戦の勃発から休戦までをテーマにしています。

第一次世界大戦の開始

当時、撮影機材はある程度小型化されており、戦争は恰好の対象として撮影されました。各国は、映像を検閲して、都合の良い部分のみをニュース映画として上映することを許しました。西部戦線で行われた第一次世界大戦中屈指の戦闘である「ソンムの戦い」のニュース映画は、イギリスの映画館動員数ではいまだに一位なのだそうです。

第一次世界大戦は、1914年から1918年まで行われ、ヨーロッパを中心として世界中に飛び火してきます。人類が初めて経験した大戦という世界規模の戦争でした。それまでの戦争では、会戦によって一方が打ち負かせば、ほぼ勝負がつくという形が多かったのです。しかし大戦は、世界中で戦火があがり、容易に勝負がつかないという悪循環を生み出します。総力戦という、悪夢が各国家の財政や大衆を襲うことになりました。

セルビアでオーストリア皇太子が暗殺されたことから、オーストリア=ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告します。ヨーロッパの各国が、軍事同盟や協定に縛られたかたちで雪崩をうって戦争に参加していきます。ドイツ・オーストリア・オスマン=トルコを中心とする同盟国軍と、ロシア・フランス・イギリスなどの連合国軍が激突します。

初めのうちは、この戦争が泥沼化するとはだれも思っていなかったのです。しかし、どの戦線でも新兵器・機関銃が威力を発し、従来の歩兵や騎兵による突撃は無意味の戦法になりました。そこで塹壕戦という、持久戦略を取らざる得なくなります。これがドイツとフランス国境を舞台とする西部戦線を膠着状態に陥れます。どちらの陣営も決定的な突破力をもつことがなく、戦争が長引いていくのです。

兵器の進化はすさまじいスピードで進む

塹壕戦による膠着状態をなんとか打開しようとする動きは、主に2つありました。

ひとつは、兵器を進化させることです。新兵器として決定的な働きをしたのが戦車です。分厚い装甲と無限軌道を備えた鉄の獣は、塹壕を乗り越えて兵士を軽々と轢き殺していきます。銃しかもたない歩兵には、まさに悪魔に見えたことでしょう。

飛行機による爆撃も行われました。そして地雷や毒ガスなど、近代戦で必須の兵器が続々と開発され、投入されていったのです。このような新兵器を投入するには、莫大な戦費がかかります。各国は総力戦という名前のもと、国家予算のほとんどを投入し、債務を負うことになります。債権国はアメリカです。アメリカは戦場にならず、兵器工場としてヨーロッパの国々に兵器を売って莫大な利益を得ます。この債権を回収することが、アメリカを第一次世界大戦に参加させることになったのです。

ふたつめとして挙げられるのは、謀略戦です。ドイツはロシアにレーニンを送り込み、ロシア革命を成功させます。ソビエト=ロシアの誕生です。ロシアは全面降伏し、戦争から離脱します。ドイツの謀略は、東部戦線を解決するという見事な結果を出しました。

謀略戦ではイギリスも負けていません。同盟国側であるオスマン=トルコを弱体化させるためにアラブ民族の独立を約束して内乱を起こさせます(フサイン=マクマホン協定)。この任務にあたったのがアラビアのロレンスです。また、ユダヤ系財閥のロスチャイルド家から戦費を引き出すために、イスラエルの建国を約束します(バルフォア宣言)。後に、このダブルブッキングが悲劇を生むことになりました。

泥沼の総力戦を終わらせるため、連合国側はアメリカを仲間に引き入れます。アメリカの豊かな物量戦術は功を奏し、ついにドイツを休戦に追い込むことに成功します。恐るべき大戦は、ひとまず終わりを告げたのです。

終戦と、戦争が残した傷跡

ヨーロッパの国々は荒廃し、財政は破綻していました。難民は溢れ、戦争の傷跡は深刻なものでした。

塹壕戦という前代未聞の苛酷な戦場を体験した兵士は、兵役から解かれてもその後遺症に苦しむことになります。つねに砲弾が浴びせられるような塹壕にいたことでシェルショックという、一種の精神病になりました。また、売春宿での不潔なセックスによる梅毒の流行も深刻なものでした。なにより、この時期にスペイン風邪という新型のインフルエンザが流行し、一説には兵士や民間人を合わせて一億人の死者を出したともいいます。

戦争を早く終わらせるはずだった毒ガスは逆に戦争を長引かせ、持久戦のために掘った塹壕によって爆発的に流行したスペイン風邪が休戦を早めたことは、なんとも皮肉なことですね。

この後、アメリカは戦後の大好景気によってバブル経済に突入していきます。ヨーロッパ、特に敗戦国のドイツは巨大な債務に苦しみ、ヒトラーという独裁者の登場を促すことになります。ユダヤ人の約束の地、パレスチナはユダヤ難民が押し寄せ後に紛争地域になります。なにもかも、第一次世界大戦のころに種がまかれた結果と言ってもいいでしょう。


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