『マズ飯エルフと遊牧暮らし』の生活の知恵

ホビー

『マズ飯エルフと遊牧暮らし』というマンガは、なかなか滋養がつまった内容になっていますので、紹介したいと思います。

ネタバレを含みますので、作品を楽しみたいかたは、この記事のスキップをお願いします。

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遊牧暮らしという設定

冒頭から、主人公が異世界に飛ばされます。その間、4ページです。まあ、異世界ものなので異世界に行かなければ話が始まらないことは分かりますけど、なかなかシュールなスピードですね。

飛ばされた先は草原です。遊牧生活をしている草原エルフという一族に助けられ、一緒に生活するようになります。主人公は料理が得意の高校生という設定ですので、いままで美味しいものを食べていなかった草原エルフ族に、元の世界で覚えた料理の腕で美味しいものを作って食べてもらい、認められます。

遊牧生活というところがミソだと思います。草原エルフは羊に相当する動物、メェーメェーを飼って生活しています。メェーメェーを育てて街で売り、そのお金で生活必需品を買いそろえます。またメェーメェーの乳、毛皮、肉、骨などすべてのものをムダにすることは許されません。これは遊牧民であるならば当たり前のことですが、そこがマンガの設定に反映されていることは、なかなか興味深いいと思います。

主人公は、美味しい料理でいろいろな問題を解決しながら、元の世界に帰る方法を探しています。元の世界のいろいろな時代、国から、人間がこのエルフの世界に転送されてきていて、その謎を探るのも面白い伏線となっています。

このマンガ、アマゾンレビューでは、かなり叩かれています。曰く、主人公の料理の腕をアピールするために原住民である草原エルフをあたかも未開人のように描いており不快だということです。

マンガなんで、そこまで神経質に批判する必要があるのか分かりませんが、少なくとも遊牧民の生活をまっとうに描写していると思いました。「美味しい味くらい、主人公が教えなくても知っているはずだ」という主張もありましたが、昔の遊牧生活の伝統を守るような人々は、食べるものがほぼ羊頼りなのは間違いないです。

現代の日本人がいろいろな味を楽しめるようになったのはつい近代の話であり、200年前には、ほぼ米や雑穀のみで生きていたのですから、その基準で批判するのは違和感があります。

出てくる料理が面白い

主人公は、ほぼ羊だけを食べていたエルフの人々に、美味しくなるように工夫した料理を作って食べてもらいます。

水餃子、ケバブ、焼うどん、チーズ、ヨーグルト、ワイン、パン、シチュー、パイ、カツレツなどなど。これらを原材料をそろえるところから作っていきます。この辺は醸造や製粉といった、食品を作る過程から紹介しているところが面白いと思います。小麦粉などの料理が多いのは、小麦粉製品が美味しいからですね。羊の乳を煮て飲む。また、羊の肉を茹でて岩塩だけで食べるということしか知らなかったということならば、小麦粉がいかに美味しいものかを知ることは、分かりやすいですね。

また、麦芽糖から「甘味」、野菜のスープから「うま味」といった味を知るストーリーがなかなかリアルです。フィリピンの森林で戦後29年間生きていた小野田少尉も、サバイバル的な料理を作って食べたことを述懐しています。アリに小便をかけると、アリは蟻酸という酸を出します。これを酢の代わりにして、米と混ぜて寿司をつくったという話を聞いたとき、そんなことができるのかと驚いたものです。サバイバルの中でも、保存がきくように酢飯にし、しかもその味を楽しもうという考えがあるのは、ほんと人間の知恵ですね。

遊牧に適した草原には、野菜や果物、魚、穀物などはほぼ無いでしょう。交易で得るしかないのです。そのほかは、使えるものはすべて無駄にせずに使い切る。大切にする心得がないと生きていけないのは、想像できます。豊かな日本のような状態こそ、近代の50年から100年の間に成立した大量消費社会であり、人類16万年の歴史のなかではかなり異常な状態なのだと思います。

ナチュラリストやミニマリストにはおすすめの理由

このマンガは、ナチュラリストやミニマリストには面白いのではないかと思います。自然の素材だけつかい、美味しいものを作り出す工夫はナチュラリストにアピールします。ミニマリストのなかには冷蔵庫すらもっていない人も多いでしょう。保存食について語られている部分は、参考になるのではないでしょうか。もっとも、日本のミニマリストはコンビニありきで成り立っているのかもしれないですけど。

最小限の素材で、最大限の美味を作り出そうということが創意工夫です。調理というものが、文明の中で育ってきた背景には、安全なものを食べたいということ、どうせなら美味しいという欲求を満たしたいということがあると言えます。

古代中国では、料理人の地位はそれほど悪くなかったと思います。貴族は専属の料理人を雇い、美味しいものを食べてきました。料理人は貴族の食べ物を管理する立場にいるので、毒殺などから身を護る必要から、信用されるものだけがなれる職業でした。有力貴族、あるいは王族の料理人から側近になり、政治の世界に取り立てられることもありました。

禅の世界では、調理を担当する係の僧侶は「典座」と呼ばれ、高い地位にあります。他の僧侶に食事を施す役割は善行として重く見られるのです。日本曹洞宗の祖である道元は、「典座教訓」という食事のマナー本を著述しているくらい修行のなかで食事というのは重要視されてきました。

さて、この『マズ飯エルフと遊牧暮らし』は、そのような食事にたいする真摯な姿勢が見える良作だと、管理人は思います。興味を持っていただけたら、ぜひ読んでみてくださいね。


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