世界はこんなに広いのに、なぜお行儀よくしているのか

メンタル

雲門曰く、「世界恁麼に広闊たり。甚に因ってか鐘声裏に向かって七条を被る」。

岩波文庫『無門関』

雲門和尚は言われた。「この世界はこんなに広々として果てしない。なのに、お前さん達はどうして鐘が鳴ると、そんなにお行儀よく袈裟などを身に着けるのか」。

臨済禅の問答集、『無門関』十六則「鐘聲七條」の言葉です。無門和尚は、この則に「周りの景色にひきずられてはならない」と注を付けています。

世界はこんなに広いのに

世界は広く、人間は本来は未知の土地に憧れて放浪を繰り返すこともできる生き物であるはずです。しかし定住生活に慣れている人々は、安定で快適な現状を手放すことがイヤなのでしょう。環境を変えることが怖くてたまらないので今の環境にしがみつくという、視野の狭い生活を送っている人も多いです。むしろそのような人が多数派で、冒険心に満ちた人のほうがマイノリティなのかもしれません。身近に「ワンピース」のルフィーみたいなのがいたら、付き合ってられないし、生活に支障をきたしそうですからね。

それでも、いろいろな理由で外を目指さなければならない日がやってきます。ある人は、自分の成長を求めて。またある人はリストラなどで仕方がなく、別の世界に飛び込んでいきます。誰しも、未知の世界は怖さと期待があるでしょう。名著「チーズはどこに消えた」でも、留まるよりは未知の世界に飛び出していくことが有利であり、推奨もしています。

環境を変えてみると、思ったほど不安ではなかったということもあります。むしろ、いままで自分がしがみついていた世界が、イビツなものに見えるかもしれません。なんでもっと早く決断しなかったのだろう、と思えるのは幸せですね。

逆もまたあります。前のほうが良かったとか、未練たらたらで仕方がなく離れることは失意に覆われて何もやる気が起きなくなるでしょう。しかし、それでは進歩はありません。泥をかぶっても、次に生かせる何かを泥の中から必死に探して拾い集めないことには、苦労する価値もないというものです。

渋谷も実は広かった

2020年4月の現在、新コロナウィルスの影響で、夜間の外出の自粛が求められています。渋谷の街もガラガラで、人影もそれほど多くありません。渋谷ですらそうなのですから、無名の街はもっと過疎化しているでしょう。

雲門曰く、「渋谷はこんなに広いのに、お前さんたちは都知事が自粛を呼びかけると、なぜお行儀よく家になど籠るのか」という感じですね。もっと、ルールを守らない人たちがいてもおかしくないのに、これだけ守られるというのも、違和感ありで異常な事態だと思います。それとも、報道が都合の良い部分だけ放送しているのかもしれませんが。

常に人が溢れる渋谷や秋葉原、新宿などは、人の匂いでまずイヤになりますね。管理人は田舎者なので、向かいからぶつかるコースで歩いてくるひとと、うまくすれ違うことができません。同じ方向に避けようとしてしまします。特に、携帯を見て歩いている人、イヤフォンをしている人などは、視力と聴力と注意力を放棄しているわけで、人混みのなかをどのように避けて歩いているのでしょうか。魚のように側線が着いていれば、ヌルっと避けて進めるのかもしれませんが。

疎遠から生み出されるもの

渋谷の交差点のような、人と人がぶつかり合うほどの圧縮された場はエネルギーを生みます。都会で新しいアイデアが生まれるのは、単に狭いところに人が集まってぶつかり合っているからかもしれません。核融合のようなもので、何かと何かがぶつかってエネルギーが放たれると、瞬間的ではあっても、そこから新しい何かがうまれるのです。

では、全く逆の疎遠の世界を考えてみたらどうでしょうか。物質が衝突するにはあまりに距離が離れている薄い世界。虚無のなかに、ポツリポツリと何かがあり、それらはあまりに遠いのでお互いを知ることはできません。

「風の谷のナウシカ」では、「オームの友愛や労わりの心は虚無から生まれた」というセリフがあったかと思います。生命は虚無から生まれて虚無に還る。そんな無常の世界のなかで、どんな形であれ関わることができたなら、一期一会として縁を大切にしたいというような意味が込められているのかもしれません。

そう考えれば、虚無や疎遠、孤独というものも恐ろしくありません。すくなくとも現代の人間は、求めさえすれば何かしら誰かとコンタクトを取ることができます。孤独地獄よりも、まだ救われる世界なのかもしれません。たとえ完全に孤独であっても、自身の過去の思い出は堅牢で、今現在を支えます。また未来に希望を託すこともできるのですから、絶望することがあってはならないと思うのです。


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