2020年春はコロナウィルス騒動の真っただ中にいるわけですが、出会う人、すれ違う人たちすべてがマスクをしている状況はやはり不気味ではあります。
第二次世界大戦のバトル・オブ・ブリテンでは、ドイツ軍の飛行機が空から毒ガスを撒くという想定のもと、ロンドン市民はみな防毒マスクを持ち歩いていたそうです。そこまでは行かなくとも、似たような状況になっています。
マスクをしていても視線がわかる
マスクをしていると、相手がどんな人かわからないので不安になるのでしょうね。その点、口と鼻を隠しているだけのマスクであれば、視線が分かりますからそこまでは気持ち悪い感じはしないのではないでしょうか。これが、サングラスをかけたり、完全に顔を覆っていたりするようなものでは、相手の視線が分からないため、非常に不気味な感じになります。
視線というのは具体的にはなにもないわけですが、見られているなというのはなぜか感じるものです。きっと、他人の視界に自分が入っていることや、相手の姿勢や向き、音などの情報から、自分が見られているということを脳が判断するのでしょう。それを言葉で表現すれば、視線を感じる、ということになるのです。
そこまで視線を重視するのは、やはり身の危険があるからなのでしょう。狙われていることを先に察知できなければ、襲われる可能性があるということです。人類の先祖は、ほぼ常に弱者の立場にいたので、襲ってくる肉食動物などを避けるためにそのようなセンサーを発達させたのでしょう。
表情とコミュニケーションの関係
視線や口の形、声、ジェスチャーなど、人と人とのコミュニケーションに必要なものは多いです。特に表情は重要で、人間の顔の細かい筋肉が発達しているのは、その表情をつくるために進化したものです。群れのなかで、相手と意思疎通をすることが、生存戦略にとって重要だった証拠なのです。
群れの統率のために表情を使いだしたのは、人間の先祖が目を特に進化させたからでしょう。原始的な猿だったときには、敵の襲撃をさけるために樹冠で生活していた先祖は、木から木へと飛び移ることを可能とするために、立体視を進化させました。目は、顔の横から前のほうに移ってきて、視界が交差する範囲、すなわち立体視ができる範囲を増やしました。
目は顔の横についていたほうが、本来は敵の察知には向いているはずです。野生動物の多くは、目は頭の左右についていて、それぞれが視界を広く保っています。人間の先祖はそれを捨て、立体視を得るほうへ進化しました。それにより、眼底を持つこともでき、脳が巨大化することにもつながっていきます。
些細なことでも目に入ることは、情報として脳が処理しようとします。歩きスマホをしている人が事故を起こしたりするのは、その外部センサー的な余力をすべてスマホから入ってくる情報を処理しようとするために使ってしまっているためではないでしょうか。こころなしか、スマホを見ている人は表情がなく、魂が抜けたような顔をしていることがあるように思えるのです。思考が停止しているのかもしれませんね。
冷静に怒りを表す人の良し悪し
表情と感情は密接な関係にあったわけですが、理性が発達した人類は、作り笑いや、わざと怒ってみせるなどの、嘘をつくことができるようになりました。
お笑い芸で、「笑いながら怒る人」というのがありますが、クレバーな人はそのようなことができるのです。感情的になることは得ではないと考えられすシチュエーションでは、理性でその感情を押さえつけて、表面上は取り繕うという器用な真似ができるのです。
その分、ストレスはたまるでしょう。市役所の苦情受付の人みたいなものです。とりあえずはその場は収めますが、ねじ曲がった感情をどこかで発散させないときっと心の病になるでしょう。経験的な話ではありますが、そのように表情と感情を切り離せる人は、裏では口汚く罵ったり、お酒が入ると手に付けられないような暴言を吐いたりすることがあるみたいな気がします。
裏表があるのは、現代の社会では比較的あたりまえの話です。「大人になれ」という理論で、社会的に波風を立てないのがマナーとなっています。しかし、そのことで裏で悪口をいう、罵るという態度をとっている人は、信用されなくなりやすいでしょう。誰か別の人の悪口などを聞かされれば、「この人は他人のことをこんなに悪く言うのだから、きっと私のことも裏で悪口を言っているのだろう」と思われてしまいますね。
建前をつくることは、信用を失うためにするわけではありません。前向きにポジティブに、そして不要なことは言わないこと。これが本当の大人の態度なのではないかと思います。サンクコスト、サンクタイムを検証するのはいいことですが、それを責めても何の利益も生みません。そこから何ができるのか、どう巻き返すのかをポジティブに判断することこそ、成熟というものだと考えます。
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