方丈記はミニマリストとして無常観を受け入れる話である

リラックス

鴨長明の『方丈記』は、言わずとしれた日本の古典3大随筆の一つです。「行く川の流れは絶えずして」で始まるその文章は、「無常」という言葉に集約されています。人間の世は無常の世に過ぎず、時の流れ、自然の営みをどうこうすることはできません。

教科書で初めの段を読んだだけだったので、せっかくだから通しで読んでみようと思って「青空文庫」の方丈記を読みました。ページにしてわずか19ページですが、なかなか鋭いことが書かれていて、なるほどなあと思わせる部分も多い文章でした。

方丈記で貫かれている無常観

方丈記の方丈とは、一丈四方の広さという意味で、鴨長明が60歳を過ぎたあとに住んだという「方丈庵」を表しています。一丈が3.03メートルなので、4畳半よりもちょっと大きいくらいのワンルームです。

最初に無常観についていろいろと書かれています。どんなに栄えた家であっても、子孫がその家財を食いつぶしたり、時間ととともに貧乏になりやがて一家離散ということにもなります。また、どんなに富強を誇っていても、火事や竜巻、地震などの災害にはまったく無力で、いつかは、なにもかも無くなってしまうのです。

また人命についても、心細いと言わざるを得ません。方丈記の中では、養和の飢饉についての記述があり、無数の餓死者が出たことが記されています。どんなに栄華を誇った人であっても、飢饉に出会えばどうしようもなく、家の金銀財宝を売り払っても一日分の食料すら手に入らないのです。餓死してしまえば、貧富の差などなく、ただの死人でしかありません。無常の世は、これを受け入れないと生きて行けない、苦に満ちた世界なのです。

ソロキャンパーとしての生き方

そのような無常の世には逆らっても無駄なのだから、せめて心安らかに生きようというのが鴨長明の考え方なのだと思います。組み立て式のミニマルな小屋を建て、贅沢はせず、隠棲して心安らかに生きることこそ、望みなのです。これについてはどんなに世が変わろうと通じるところがあります。家など、夜露をしのげればいいのです。多少の不自由があっても、好きなところに庵を結び、別のところに行きたくなれば、庵をたたんで車に乗せて、引いていく気楽な生活です。

まさに、ミニマリストというか、ソロキャンパーみたいな生き方を良しとしているようですね。無駄なものを持たないというところが、世の中から自由になる秘訣とも言えるでしょう。人間関係についても、方丈記のなかでは語られています。人との付き合いなどなくても、草木自然を友として生きれば良いという考えかたには、唸らされてしまいますね。

現代日本の便利、快適を追求した都市に依存した生き方と、なんと違うことでしょうか。そのような利便性からは外れた、ミニマリストやソロキャンプが一定の評価を得ていることは、自然災害や疫病、低い賃金といった不安感から逃げ出したいという想いがあるのではないかと思います。

現代の科学技術との対比

方丈記の後半では、方丈庵での生活に満足している様子が描かれています。煩わしさからの離脱という意味では、うらやましい部分も多いですね。生活や家族というものさえ、ミニマルなものに限定してしまえば、それなりに楽しい一生が送れるのかもしれません。

それとは全く逆に、現代の科学技術は、自然災害や飢餓といったものを人間の力で抑え込もうとしているようです。『合成テクノロジーが世界をつくり変える』(クリストファー・ブレストン、インターシフト)という本では、産業革命に始まり、テクノロジーによる環境の管理、ナノテクノロジーによるエネルギーの生成、そして生命そのものを作り出そうとするゲノムデザインの話が出てきます。

方丈記が書かれた頃、人間はか弱い存在でしかなかったものが、今や神と同じ位置に立とうとしているようです。800年という短い期間に、そこまでドラスティックに変わるとは、誰が想像できたでしょうか。

旧約聖書に出てくるような神が存在するならば、ソドムやゴモラ、そしてバベルの塔のように、人間の思い上がりに対して罰を当てる頃かもしれません。新型コロナウィルスが流行した初期に、SNSで陰謀説や生物兵器説などの珍説が拡散したのも、そのような人間自身が思い上がっているということについての恐れが根本にあったからなのかもしれませんね。

合成テクノロジーが世界をつくり変える: 生命・物質・地球の未来と人類の選択 | クリストファー・プレストン, 松井信彦 |本 | 通販 | Amazon
Amazonでクリストファー・プレストン, 松井信彦の合成テクノロジーが世界をつくり変える: 生命・物質・地球の未来と人類の選択。アマゾンならポイント還元本が多数。クリストファー・プレストン, 松井信彦作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また合成テクノロジーが世界をつくり変える: 生命・物質・地球の未来と人類...

いつも読んでいただいてありがとうございます。クリックしていただければ励みになります。いつも皆さまがリラックスしていられるように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました