マイルスが憧れたブルックスブラザーズが経営破綻

ジャズ

ブルックスブラザーズは、アメリカン・トラッド・スタイルの象徴でした。日本で1970年代のアイビーブームがあったとき、頂点にはブルックスブラザーズのスーツがありました。そのブルックスブラザーズのアメリカ本社が、2020年7月8日経営破綻しました。

時代を超越して愛されていると思いきや、やはりファッションの世界はブームで動いているのだということでしょう。業績の伸び悩んでいた所に、新型コロナウィルスによる店舗の休業が追い打ちをかけ、資金繰りに行き詰まってしまいました。日本法人は経営を続けるとのことですが、本場アメリカで無くなってしまったことは、なんとも残念です。

帝王マイルスの憧れ

ジャズの帝王こと、マイルス・ディビスがブルックスブラザーズのスーツに憧れて、胸を熱くしていたことは、自伝でも語られている有名な話です。第二次世界大戦前後のジャズマンの服装、特に黒人ミュージシャンは、ドレープ・スーツというダボッとしたスタイルが普通でした。ビバップの革命児であるディジー・ガレスピーも、ドレープ・スーツに角縁眼鏡をトレードマークにしていました。エンターティナー、キャブ・キャロウェイもダボッとしたスーツを着ていますから、当時の流行りだったことが伺えます。

マイルスは、そのような黒人の服装が「ヒップ」ではないと考えていました。彼はもともと、人種差別問題には非常に神経質だったのです。従来の黒人が好むスタイルに合わせることを良しとしませんでした。彼のなかで最もヒップであった、ブルックスブラザーズのスーツを着ることにこだわったのも当然だったのかもしれません。

1950年~60年のマイルスは、クール・ジャズを追求していきました。そこには「洗練」されたセンスが必要だったのです。ブルックスブラザーズのスーツは、その目的にぴったりと合っていました。

マイルスがスーツを誂える際に、トランペットを吹く時の腕の角度で綺麗ににワイシャツの袖が出るよう、細かく注文したという逸話があります。彼にとって、ブルックスブラザーズのスーツがいかに重要なものだったのかが分かるような気がします。

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奢侈禁止令

奢侈禁止令(しゅしきんしれい)は、贅沢をやめ、倹約を強制するための法令です。日本では江戸時代の贅沢禁止の法令が有名です。農民に対しては服の素材を木綿のみに限定します。絹や紬などの高級な素材、また紫や赤などの派手な色合いも禁止されてしまいます。

これは、贅沢の禁止を目的にはしていますが、身分制度の遵守を強制したものでしょう。高級武士でないと衣服に絹を使えないし、履物も雪駄、金裏の傘など、多くの服装について厳しく制限がされます。富裕な商人などは、服の裏地に贅沢をすることで鬱憤をはらしていたようです。

また、江戸時代も成熟してくると「粋」か「野暮」かで、その人の評価が確定してしまう風潮が出てきます。裏地におしゃれをしたり、法令の制限内でも装いにちょっとした工夫をすることで粋になります。逆に、野暮に分類されてしまうと、それこそ誰にも相手にされなくなるくらい惨めな目に遭うのです。そういうことに慣れていない、田舎の人が江戸に出てくると、都会って怖いなって思う感じなんでしょうね。

階級闘争の象徴でもあった

アメリカにおいて粋と野暮は、「ヒップ」と「スクエア」と言われます。後者は、角張ったつまらないやつという意味です。1960年代のアメリカ人は、自分がヒップであることを望みました。ここには、階級闘争的な意味合いも絡んできます。

公民権運動は、人種差別をなくすために多くのアメリカの人たちが参加した運動でした。特に黒人は、決められたところにしか行くことはできず、白人と同じレストラン、乗り物に乗ることもできませんでした。マイルスがアメリカン・トラッドの象徴である、ブルックスブラザーズのスーツにこだわったのは、このような流れから来ていると思われます。ヒップであること、白人と同じ人間だということを主張したかったのです

マイルスのこのような動きをうけて、後にジャズの演奏家のスタイルは洗練されていきます。モダン・ジャズ・カルテットも、皆揃いのトラッド・スーツを着て演奏していました。70年代になると、ヒッピー文化の影響で服装も多様化しましたが、黒人だからこの服装、という制約は少なくなっていきます。ウィントン・マルサリスのバンドも、イタリアン・スーツできちっと揃えているあたり、この流れの延長線上にあるように思います。

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