国防の形は変わり、紛争は経済分野にシフトしている

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『日本4.0 国家戦略の新しいリアル』(エドワード・ルトワック、文春新書)を読みましたの備忘です。

タイトルには国家戦略という言葉が入っています。文字通り軍事に関することが多い内容です。日本が憲法第9条により軍隊を持たない国であるという幻想を捨て、国防というものを真剣に考えるべきである。しかも、緊急にその時期がやってきていると、著者は主張しています。

国防の転機

国防を見直すべきであるというきっかけは、北朝鮮危機によるものです。北朝鮮は核武装を行い、長距離弾道ミサイルを保持することで軍事力の増強をはかっています。

隣国の韓国には、北朝鮮の軍事侵攻を防止するほどの軍事力がありません。いまから70年前の朝鮮戦争のときと同じように、首都ソウルは北朝鮮軍によって制圧される可能性が高いのです。これは、韓国軍や駐韓米軍がいても、防衛することが困難なほど、ソウルが国境に近い都市であることが挙げられます。

北朝鮮は非核化の道を選ぶこともできます。北朝鮮のバックにある中国は、北朝鮮の核保有を望んでいません。理由としては、軍事的に弱い国であったほうが、中国への依存度を高めることができるからです。また、核実験により何らかの失敗があった場合、被害は中国に及ぶかもしれないからでもあります。

経済制裁の解除を目的として、北朝鮮は非核化を選択することも可能です。アメリカや日本のODA支援を受け入れるという「ベトナム・モデル」というシナリオです。このシナリオが日本にとって一番、望ましい形となります。日本の経済力が、北朝鮮にたいしての発言力を高めることができるようになるからです。

日米安保条約による「同盟」の抑止力では、北朝鮮のような近隣の危機に対応することはできないくなっているのが、国防というものを見直す転機となっているのです。

自衛隊をアップデートせよ

日本は、国防を強化するためには核武装をするべきではありません。核は威力が大きすぎて使えないばかりではなく、核を使ったらその国は正気ではないというレッテルを貼られることになるからです。

自衛隊という国防を専らとする軍事力を、本物の戦闘力をもった軍隊にアップデートする必要があります。アメリカ軍に国防を丸投げするのではなく、戦争を戦える軍隊を持つことことそが、国防についての最適解となるのです。

冷戦後の戦争は、もはや大国間の戦争ではなく、地域紛争の形をとることが多いです。そして、戦争文化が変わりました。できるだけ犠牲者を出さないという、リスク回避の方針が取られるようになったのです。

その要望を満たすため、特殊部隊が注目されています。敵の首謀者、中枢を狙ってピンポイントで作戦と遂行する能力が求められているのです。

しかし、湾岸戦争や数々のテロ事件などを通して、アメリカの特殊部隊は肥大化していきました。これではコストがかかりすぎ、しかもリスク回避をするために戦争が長引く危険性が高くなってきました。

イスラエルの特殊部隊のように、シンプルでかつ効果的な特種部隊を持つこと。これが、自衛隊をアップデートするために必要な方針になります。

地政学から地経学へ

冷戦期を含めて、戦争は地政学的な側面が大きかったのです。しかし、現在ではその紛争のフィールドが、軍事から経済へとシフトしてきました。「貿易という文法による紛争」、経済戦争を行うようになってきたのです。

この「地経学」(ジオエコノミクス)では、国家というものが中途半端な状態で参加しています。グローバル経済のなかにあっては、国家は必ずしも主役ではありません。国境間をまたいだ、超巨大民間企業が台頭してきている時代にあって、国家と企業の関わりが代わってきています。国家とグローバル企業は、お互いをツールとして利用しあって発展しようとするのです。たとえば、巨大企業の資本力、税収入は国家にとって魅力的なので、自国に誘致しようとします。また、企業は、国家からの融資やバックアップを受けることで、新しい市場を開拓することができるのです。

これからは、地経学的な紛争が多く起こる時代になります。米中が経済とテクノロジーの領域で多くの争いを起こしているのを見ると、これからの紛争は経済分野で起こるということが理解できると思います。

感想

アメリカのトランプ大統領は、なにかと突飛なことを発言するのでネットで批判されがちですが、実行していることは、地経学的な領域に基づいているということがわかります。対中国に専念するために、ロシアとの融和をはかったり、テクノロジーの分野で中国を締め出したりすることは、アメリカの国益に寄与するためのものだったとうことが理解できました。

また、中国が最先端の医療技術に巨額の投資をしていることが、世界のエリートたちが臓器移植をするために中国の技術に頼らなければいけないという状況を作り出そうとしている、ということが衝撃的でした。世界のエリートたちの生殺与奪権を得ようとしている、という思惑があるようです。

著者が元軍人ということで、リアルな分析が行われてます。これからの国防の転換に理解が深まる一冊だと言えると思います。


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