新耳袋は現代にマッチした、「ちょっと裏側」の話

ホビー

『新耳袋コレクション(恩田陸編)』(木原浩勝 中山市朗 メディアファクトリー)を読みました。新耳袋を初めて読んだのは結構前のことだなあと思いながら、なんとなく懐かしい気もしながら楽しく読めました。

新耳袋は、都市伝説系の話が多い現代の怪談集です。1冊に99話の怪談が入っていて、百物語の形式を踏襲しています。一つひとつの話は短くまとまっていて、他愛もない内容のものも多いですが、心に残る話や、ちょっと怖い話がバランス良く混ざっています。本書は、新耳袋10冊の中から作家の恩田陸さんがセレクトした話を集めたものになります。

Amazon.co.jp: 新耳袋コレクション (恩田陸編) (ダ・ヴィンチブックス): 浩勝, 木原, 市朗, 中山, 陸, 恩田: 本
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気になる話

第3話 ブランコ
公園のブランコにスーツ姿のサラリーマンが立ち漕ぎをしていた。水平になるくらいの勢いで漕いでいるが、両側の鎖を持っていないで手をだらんと下げたまま。Mさんは疑問に思いながら立ち去った。

第10話 エレベーター
午前2時、自宅のマンションで1階からエレベーターに乗ろうとしたA子さん。エレベーターの扉が開いたら、中は主婦、サラリーマン、学生などですし詰め状態。A子さんが満員みたいだからいいです、と言うと扉が閉まり、すぐに空のエレベーターがやってきた。

第11話 友人
故郷に戻った友人が死んだ。T君のアパートにその友人の幽霊が出た。その首が、がくん、がくん、がくんと、上に延びては縮むのピストン運動を繰り返す。T君は友人が首を吊ったことを悟った。

第17話 訪問者
Tさんがマンションの5階に引っ越した。チャイムが鳴るので出ると誰もいない。玄関脇の窓から覗いてみると、真っ赤な巨大な人間みたいなものが立っていた。その後、引っ越し祝いに来た友人の奥さんも同じものを見たという。

第26話 獣の臭い
Cさんがお酒を飲んでタクシーに乗ると、運転手がしきりに動物臭いという。「お客さんもしかして動物殺したでしょう」と言う。Cさんには心当たりがあった。

第38話 配置
都内にあるKホテルの一室。テーブルの上に置いてあるものは寸分の狂いもなく同じ場所に置かれている。そうしないと、灰皿が真っ二つに割れるからだ。

第42話 黒い塊
Tさんは5階建てのマンションの5階に住んでいた。ある日、南向きの窓を開けていると、すごい勢いで何か黒い塊のようなものが飛び込んできた。Tさんの奥さんがとっさに反対側の窓を開けると、その塊はその窓から飛び出していった。後で奥さんに聞くと、その塊は髪の長い女だったという。

第46話 屋根渡り
Y君は神戸市に住んでいた。ある日友達のU君が部屋に遊びに来たとき、遠くの家の屋根の上に奇妙なおばさんが立っていることに気がついた。しばらく後に、またそのおばさんを見たが、Y君の家に近づいてきているように思えた。その後、Y君は引っ越したが、U君はあのおばさんかY君の家に来るようで怖かったという。

第61話 七福神
Gさんが元旦に夢を見た。小さな宝船に乗って七福神が家にやってくるのだが、玄関の框が上がれずに帰っていく。5日連続でこの夢を見たあと、框を一段低くした。すると、七福神が家に入ってきて宝物を置く夢をみた。その日から幸福が訪れたという。

第70話 いぬ
N子さんの家の猫は歳をとっていてめったに動くことはなかった。ある日猫が「いぬ」と喋り、その日から家に帰ってこなかった。きっと「往ぬ」いう別れとの言葉を告げたのだろうと後に語り合った。

第96話 開けといて
家族が墓参りに行くとき留守番を頼まれた。おばあさんから、仏壇の扉を開けておいてと頼まれたが、なんとなく怖くてそのままにしておいた。すると、誰もいない仏間から、バタンと仏壇の扉が開く音がした。帰ってきたおばあさんはニコニコしながら、「扉あけなかったでしよ」と言った。

新耳袋が現代でも生き残っている理由

『新耳袋』初版が1990年のことなので、すでに30年経過しています。それでも、都市伝説系の話というのは人気があるのですね。ドラマになったり、漫画化されたりして、いまだに新耳袋の世界はメディアミックスされ、身近にあります。なかなかしぶとい人気がありますね。

『耳袋』は、江戸時代の奇談・雑談集とあります。新耳袋も、怪談がメインとはいえ、人伝えに聞いた話が多いです。「友達の友達から聞いた話」という、都市伝説のスタイルを踏襲していると言えるのではないでしょうか。もちろん、本人に取材した話も入っていますが、伝聞の形で拡散していくスタイルは、SNSがインフラとして機能している現代にマッチしているコンテンツなのです。

このようなコンテンツは、いくらでも創作できてしまうという現実があります。また、再現ドラマなども、コストが安く制作できるでしょう。このあたりも、人気に関係していると思います。

しかし、やはり人間の不安や好奇心というものを刺激するということが根幹でしょう。1編が短くまとまっているということも、集中力のない現代人のスキマ時間にぴったり来るのかもしれませんね。


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